帯解寺紹介

帯解寺のはじまり

帯解寺は、弘法大師（空海）の師である、勤操大徳が開かれた巖渕寺というお寺の塔頭の一つでした。美しい松があったため、名を「霊松庵」といいました。

今からおよそ1200年前、第55代文徳天皇の妃である染殿皇后（藤原良房公の娘）は、永い間お子が生まれず、大変お悩みでありました。
そんな折、藤原家の祖神である春日明神の「奈良から南に一里（約4km）のところに、腹帯をした地蔵菩薩があるので祈願せよ」とのお告げがあったのです。
早速、お告げの通りに当寺の地蔵菩薩にご祈願されたところ、まもなくご懐妊され、次代の天皇となられた清和天皇を無事ご安産になられました。
文徳天皇は大変お喜びになり、天安2年（858年）春、更に伽藍を建立され、「無事に帯が解けた寺」、帯解寺（おびとけでら）と名付けられたのです。

ここから、帯解寺の名前は広く全国に知れ渡ることとなりました。

徳川家と帯解寺

江戸時代、長年お世継ぎがなくお困りであった、二代将軍徳川秀忠公の正室お江の方が、帯解寺のお地蔵様にご祈願され、三代将軍となられた徳川家光公をご懐妊され、無事にご安産されました。

この待望の徳川将軍家のお世継ぎの誕生に、お喜びになった徳川家から山門が寄進されました。この門は江戸末期の安政の地震で倒壊したため、現在は簡素な四脚門造りですが、当時は二階建ての楼門造りで、仁王像がある大変立派な山門でした。

またその家光公にお世継ぎがなく、側室お楽の方が春日局の勧めにより、帯解寺でご祈願されたところ、めでたくご懐妊になり、四代将軍となられた徳川家綱公を無事にご安産されました。

お喜びになられた家光公は、返礼として帯解寺に誕生釈迦仏（秘仏）などを寄進され、本堂の再建が始まるところとなりました。
また、家綱公からは寛文3年（1663年）に手水鉢の寄進がありました。

このように徳川家からも篤く信仰された帯解寺は、南都名所集や大和名所図会（江戸時代の観光案内本）で大きく紹介され、門前で売り出された帯解地黄煎飴（帯解じょう煎飴として現在復刻）が畿内の名物となるなど、江戸時代に大きな賑わいをみせることとなったのです。

近年の皇室と帯解寺

昭和34年7月、皇太子妃美智子殿下（当時）ご懐妊に際して、宮内庁より選定され、安産祈願法要を厳修し、同年9月30日、安産岩田帯（さらし）、お守り、ご祈祷札を献納いたしました。
その際、東宮御所にて「この度の慶事に際して、200ヶ所の安産霊場の神社仏閣の中から、霊験あらたかで皇室と関係の深い帯解寺を選びました」とのお言葉をいただきました。

昭和40年8月、昭和43年10月にも安産祈願法要を修し、安産岩田帯、お守り、ご祈祷札を献納いたしまして、東宮御所よりお礼状を賜っております。

そして平成3年5月、及び平成6年8月には、秋篠宮妃紀子殿下ご懐妊に際し、安産祈願法要を修し、安産岩田帯、お守り、ご祈祷札を献納、また平成13年6月には皇太子妃雅子殿下（当時）ご懐妊に際して、安産祈願法要を修し、安産岩田帯、お守り、ご祈祷札を献納いたしており、東宮御所よりお礼状を賜っております。

本尊　地蔵菩薩半跏像（国指定重要文化財）

帯解寺の御本尊さま、帯解子安地蔵菩薩は弘法大師さま一刀三礼（※）の作とも伝えられる、日本最古の安産・求子（子授け）の霊像であり、国の重要文化財に指定されています。

左手に宝珠、右手に錫杖を執り、左足を踏み下げて岩座上に坐す、像高182.6cmの堂々とした半跏像で、寄木造、表面は彩色仕上げとなっています。
また、腹前に裳の上端の布や結び紐が表されているところから「腹帯地蔵」といわれ、安産祈願の対象として広く信仰をあつめてきました。

柔和なお顔は見るものをあたたかくお包みくださり、その優しいまなざしで、悩める人々をお導きになり、確かな霊験で切なる願いを叶え、お救いしてこられた大変尊いお姿の地蔵菩薩さまです。

※一刀三礼（いっとうさんらい）…　一彫りするたびに、三度礼拝して仏像を彫刻すること